
『自費出版しませんか?』と誘われた女性経営者が、まず考えるべき3つのこと
ある日突然、「ぜひ本を出しませんか?」「あなたのストーリーを本にしましょう」というメッセージや電話が届くことがあります。
とくに、女性経営者やフリーランスで活躍していると、「ブランディングになりますよ」「同じような女性起業家もみなさん出版しています」という、心がくすぐられる言葉で声がかかりがちです。
けれど、そのオファーが「ビジネスとして意味のある投資」なのか、「高い授業料になってしまう自己満足」なのかは、冷静に見分ける必要があります。
この記事では、女性経営者が自費出版の勧誘を受けたときに、どこで利益が生まれているビジネスなのか、どんな会社なら話を聞いてもよくて、どんな会社なら距離を置いた方がいいのかを整理していきます。
自費出版は“ビジネス投資”か“高い自己満足”か?
自費出版と商業出版の一番大きな違いは、「誰がお金を出し、誰がリスクを負っているか」です。
商業出版は、出版社が制作費を負担し、本が売れることで回収をねらうモデルですが、自費出版は、著者であるあなたがお金を払い、その支払い自体が相手企業の主な売上になります。
つまり、多くの「自費出版しませんか?」ビジネスは、本が売れるかどうかより「何人の人に、いくらのプランで申し込んでもらえるか」で成り立っています。
「あなたの本は絶対に売れます」という甘い言葉があっても、相手から見れば“売上見込みのある著者”ではなく、“制作費を払ってくれるお客様”になってしまうことがあるのです。
だからこそ、女性経営者としては、「これは広告費・ブランディング費として投資する価値があるか?」という視点で金額と内容を見直すことが重要になります。
女性経営者だからこそ狙われる“物語”と“承認欲求”
女性経営者は、「仕事だけでなく、ライフストーリーも含めて自分を語りたい」というニーズを持つことが少なくありません。
起業のきっかけ、家族との両立の苦労、キャリアチェンジの物語などは、読者にとっても魅力的であり、同時に“商品として提案しやすい物語”でもあります。
そのため、「1冊の本であなたの人生を物語にしませんか?」「あなたのストーリーを通じて、同じように悩む女性たちを勇気づけませんか?」という言葉は、とても響きやすいポイントを突いてきます。
さらに「選ばれた12人の女性起業家だけが載る特別な本」「女性だけの特集号にご参加いただけます」といった“選ばれた感”をくすぐるオファーには、承認欲求も刺激されます。
ここで一度立ち止まって、「これは本当に、ビジネスとして意味があるのか/自分のエゴや焦りをくすぐられているだけではないか」を自問自答することが大切です。
話を聞いてもよい会社を見分けるチェックリスト
すべての自費出版ビジネスがNGというわけではなく、「条件が透明で、あなたの目的に合っているか」がポイントです。
次のような点を冷静にチェックしてみてください。
- 自費出版は「基本的に儲からない」ことをはっきり伝えている
- 「売上はあくまでおまけ」「ビジネス的な回収はケースバイケース」と最初から現実的な説明をしてくれるか。
- 料金と内訳が書面で明示されている
- 制作費、編集・校正、デザイン、印刷部数、電子書籍化、書店流通、広告などの有無と金額が、見積書や資料で具体的に示されているか。
- 目的を一緒に言語化してくれる
- 「何冊を誰に配るのか」「その結果、どういうビジネス効果をねらうのか」をヒアリングし、部数や仕様を一緒に設計してくれるか。
- 即決を迫らない
- 「家族や顧問税理士、信頼できる第三者にも見てもらってください」と言ってくれる会社かどうか。
こうしたポイントをクリアしている会社なら、「セミナー用の名刺代わり」「既存顧客へのギフト」「採用ブランディング」など、具体的な使い道が見えている場合に限り、前向きに検討してもよいと言えます。
その勧誘、距離を置いた方がいいサイン集
一方で、「これは距離を置いた方がいい」と判断しやすいサインもあります。
典型的なパターンを、女性経営者目線で挙げておきます。
- 甘い成功ストーリーばかりを強調する
- 「女性起業家のあなたなら絶対売れます」「これで一気に有名になれます」「テレビ出演のチャンスも広がります」など、根拠のない夢を前面に押し出してくる。
- コンテストや賞を入り口にしている
- 原稿を送ったら「高評価でした」「最終選考に残りました」と褒めたうえで、「記念に出版しませんか」と高額プランを案内する。
- 今日中・今だけなど、即決を迫る
- 「この金額でできるのは今だけです」「今決めないと枠が埋まります」など、冷静に考える時間を与えない営業トーク。
- 「女性応援」「ママの自己実現」を看板にしつつ中身が不透明
- 「女性を応援したい」「ママの夢を形にしたい」と言いながら、費用・部数・流通範囲などの具体的な話をごまかしたり、資料を出し渋ったりする。
こうしたサインが複数当てはまる場合は、「詳しい話を聞く」こと自体が時間と心のエネルギーのムダになる可能性が高いと考えて、早めに距離を置くのも選択肢です。
「自費出版しませんか?」連絡が来たときの次の一手
では、実際にメッセージや電話が来たら、どう動けばよいのでしょうか。
感情的に「嬉しい!」と反応する前に、次のステップを踏むのがおすすめです。
- その場で決めない
- どんなに魅力的なことを言われても、「ありがとうございます。一度持ち帰って検討します」と伝え、その場で契約しない・お金を払わない。
- 書面でもらう
- 料金表、プラン内容、部数、流通範囲、著作権の扱い、キャンセル規定などを、必ず書面でもらう。口頭説明だけで進めない。
- 第三者に見てもらう
- 税理士、弁護士、出版経験のある友人・同業者など、利害関係のない第三者に見積書と契約案をチェックしてもらう。
- 自分のビジネス計画に当てはめる
- 「この費用を回収できそうな売上や効果は、現実的に見込めるか?」を数字でざっくり計算してみる。
- 違和感があるなら断る
- 少しでも「なんとなく嫌だな」「押しが強いな」と感じたら、「今回は見送ります」とはっきり断ってよい。
女性経営者にとって、本は強力なブランディングツールになり得ますが、同時に「承認欲求につけ込まれやすい商品」でもあります。
「自分の物語」を大切にするならこそ、「どこに・いくら・何のために投資するのか」を、経営者としての冷静な目で見極めていきましょう。








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