フルタイムで働く女性のための「3歳児神話」と愛着形成 ― わたしたちらしい子育てへ
はじめに
「3歳までは母親が家庭で育てるべき」――いわゆる「3歳児神話」に、子育てと仕事の両立を頑張る女性が悩むことは少なくありません。気になってちょっと調べたところ、現代の研究や海外の育児事情からは、この神話にとらわれすぎなくてもいいことが見えてきました。
1. 3歳児神話の本当の由来は?
1950年代、イギリスのジョン・ボウルビィによる「愛着理論」が登場しました。けれど本来この理論が語るのは「安定して子どもと関わる大人の存在」の大切さで、必ずしも“母親”でなければならないものではありません。
日本では戦後、専業主婦モデルが主流になった世相も重なり、“3歳まで母親が必要”という考えが強く広まっていったと言われています。
2. 海外事情と仕事&育児の両立
たとえば北欧やアメリカでは、「母親がずっと家にいなきゃダメ」という発想はほとんどありません。
- スウェーデンでは「1歳児神話」に似たものもありますが、ケアするのは母親に限らず父親や保育士など、いろいろな大人でOK。
- アメリカでは「フルタイム勤務の母親の子が発達で不利になる」証拠はなく、質のよいかかわりが大切とされています。
社会全体で育児を支えあう仕組みや意識が根付いている点も、大きな特徴です。
3. 子どもの愛着形成 ― 大事なのは「関わりの質」
0〜6か月は、子どもは誰にでも反応します。
6か月〜3歳ごろは、特定の大人が「安心の基地」となり、愛着がはっきりしてきます。それ以降は、安心できる大人がいれば心の安定を保てるようになります。
保育園や地域の人など、いろいろな大人とふれあうことも、子どもにとって大きな支えです。大切なのは「だれが」ではなく、「信頼できる大人と質のよい関わりがあること」なのです。
4. 働くママへのヒント
「3歳児神話」は、世界の最新の研究や支援制度からも“絶対”と言えるものではありません。
- 「長く一緒にいられない…」と不安をためこまず、一緒にいる時間にいっぱい愛情を伝えることがなにより大事。
- 家族や地域、保育園など周囲のサポートも積極的に使いましょう。
- 仕事と家庭のかたちはさまざまでOK。安心できる人間関係(ネットワーク)を築いていくことがポイントです。
5. 日本社会も、少しずつ変わってきています
育休や時短勤務、病児保育など、働く親を支える仕組みも充実しつつあります。保育士さんや保育園も、子どもにとって大切な「身近で安心できる大人」として、その成長を助けてくれます。
メッセージ
「母親が3歳まで家庭で育てないとダメ」という価値観に、とらわれなくて大丈夫。愛着形成に本当に大事なのは、“子どもが安心できる大人がそばにいること”。働く女性も、ご家族と一緒に、無理なく自分たちらしい子育ての形を選んでいけたら良いですね。
参考・出典一覧
- ジョン・ボウルビィ「愛着理論」関連論文
- 発達心理学資料(0~3歳の発達段階や愛着形成に関する研究)
- 日本社会の3歳児神話に関する社会学・保育研究
- スウェーデン、アメリカの育児・保育の比較研究(国際育児政策資料)
- 「フルタイム勤務と母親と子どもの発達」各種心理学・社会学論文
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